今日の「カバーの名曲」はプリンスがカバーした「A Case of You」を取り上げます。
ジョニ・ミッチェル「A Case of You」
「A Case of You」のオリジナルはジョニ・ミッチェルが1971年6月に発表した4作目のスタジオ・アルバム「Blue」に収録されていて、グラハム・ナッシュとの別れを元に書かれたというエピソードも残されています。「私はあなたを1ケースだって飲み干せる。それだけ飲んでもちゃんと自分の足で立っていられる」という歌詞が印象的。録音はジョニ・ミッチェルがアパラチア地方の弦楽器、アパラチアン・ダルシマーを弾き、ジェイムス・テイラーがアコースティック・ギター、ラス・カンケルがドラムスをプレイしています。傑作「Blue」の中でも1、2を争う人気曲ですが、この頃のジョニの高音は透き通っていて「カ〜ナ〜ダ〜ア〜」のところとか最高ですね。
この曲はプリンスの他にも素晴らしいカバーが多いのでここで紹介しておきましょう。シンプルな曲だけに、カバーするミュージシャンの人となりが顕著にあらわれています。
まずはジャズ・ヴォーカリストのダイアナ・クラール。ピアノの弾き語りであの特徴的な低音ウィスパーヴォイスを聴かせてくれています。
もう一つはジェイムス・ブレイクのバージョン。このカバーもヴォーカルにエフェクトを掛けることなく、真正面からピアノ弾き語りで挑んでいます。
プリンスの演奏
プリンスが「A Case of You」をカバーしたのは2002年5月発表の通算25作目のスタジオ・アルバム「One Nite Alone…」でした。タイトルは「A Case of U」と殿下特有の同音異字で表記されています。出だしからトロけそうなファルセットがたまりません。第1ヴァースと第3ヴァースの歌詞は女性のことを歌っていることが明白ですが、この第2ヴァースは性別を限定しない歌詞。ここを取り上げ、さらにファルセットで歌うことでプリンスらしい性別を超越した表現になっているのではないでしょうか。
この曲、オリジナルを含め女性陣が歌うと、強さや新しい出発に目を向ける割り切りみたいな感情を感じるのですが、男性陣が歌うととても切ない曲に聴こるのが不思議です。
このプリンスのカバーは2007年に発表されたコンピレーション「A Tribute to Joni Mitchell」にも収録されていて、他にもビョーク、ブラッド・メルドー、アニー・レノックス、エルヴィス・コステロなどが参加していておすすめ盤です。
2018年に発表された、プリンスが1983年に残したピアノ弾き語りの未発表曲集「Piano & A Microphone 1983」にも「A Case of You」が収録されていて、ここでも第2ヴァースだけの演奏。この時点でスタイルが完成されていたんですね。
コメント