私が今、一番観たかったライヴ。
ヴィブラフォン奏者、ジョエル・ロスのBlue Note Tokyo公演を観に行きました!
聖地Blue Note Tokyoは初めてでした。
名古屋から東京への遠征も久しぶり。その辺も交えて書いてみようと思います。
持つべきモノはお友達(TL)
2月のとある日。
いつものようにTwitter(X)を開く。
いつもながらの賑やかなタイムラインに目を通していると、ひときわまぶしい投稿がっ!
「Joel Ross 来日決定」
まじか!どこや!
東京だけかぁ〜。
でも土日の公演があるから行けるはず!仕事はおそらく大丈夫。今回はひとり旅。
妻にも了解を得た。
よし。チケット取ろう。
と決意したのでした。
チケットは確保したが、、、
2月22日。チケットの発売開始。
まあ、大丈夫だとは思うけど、12時ちょうどにオンラインで予約。
あっさり予約完了。
アリーナの相席にしたのでチケット料金は9,900円。
カルテット編成だけどこれは安いと感じる。円安で感覚おかしくなってるかもしれないけれど。
よし。まずはOK。
問題はここから。
まず、ホテルを探す。
土曜日だからなぁ〜。しかもゴールデンウィークに片脚突っ込んでるからなぁ〜と覚悟はしながらagodaをチェック。
はい。カプセルホテルでも10,000円近い金額の部屋がチラホラ。
え、まだ2か月前ですよ。
ビジネスホテル泊まろうものなら2万越えは覚悟しなくちゃいけない。。。
マンガ喫茶も考えましたが、無理は禁物。
上野のカプセルホテルを予約しました。6,000円。
少し割高感はあるけれど、まあ仕方なし。
カプセルホテルもいろいろ見たけどピンキリですね。
東京で買いものしたり回ったりもしたいので、宿泊や移動は切り詰めたい。
移動は深夜バスにしました。
深夜バスにカプセルホテルって20代みたいだけど笑。
保険料も含め、運賃は8,100円。
帰りはわからないことも多いので、とりあえず予約しないでおこう。
というわけで、移動と宿泊は準備完了。
深夜バス
こういう日に限って仕事の不確定事項がそのまま残る。こういうモンですね。連休前に片付けなきゃならんのに。。。
しかし今日は移動日。定時といってもユルユルですけど、定時にあがる。
夕飯を食べて、遠征の準備をし、風呂に入ります。
その後、22時過ぎに移動開始。最寄り駅まで妻に送ってもらい、地下鉄で名古屋駅へ。
時間きっかりに集合場所に到着し、係員の指示に従いバスへ移動。いや、久々だな。深夜バス。50代になった身体がどういう反応を示すのか。
水曜どうでしょうですら50代でのバス移動はやってないわけでして。。。
不安を抱えつつバスに乗り込みます。なんと最前列の席。眠れたとしても休憩ごとに起こされること確定です。
シートは2人席が2つずつ並ぶ一般的なもの。広くはないね。お隣は同年代くらいの男性で、横の列は若い男性2人組。後ろは70代くらいの老夫婦。凄いな老夫婦。
バスのルートは新宿→八重洲口→ディズニーなので、家族連れも多い感じです。
深夜バス独特の湿気を含んだ空気の中、いよいよ出発。
運転手さんの対応やアナウンスが素晴らしい。運転もスムース。良かった。眠れるかも。
と思ったけれど現実は甘くない。体勢が決まらない。首が痛い。どこかに体重がかかる。
体勢変更と浅い眠りを繰り返し、3つのトイレ休憩を超える。眠れたような眠れなかったような変な感じ。
予想通りのやられっぷりで新宿着。5時30分。
運転手さんありがとう。あなたは完璧な仕事をしたよ。引き続きご安全に。
まずは聖地巡礼

新宿に着いたけれど、早朝なので電車も動いてなかった。しかし人は多い。
割とやられていると感じたので、とりあえずマンガ喫茶で仮眠しよう。
と移動したが、さすが東京。2店舗が満席。同じ境遇の人が多いのね。多分。
3店目でようやく個室をキープ。
3時間コースにして眠りにつく。
リクライニングソファは快適ですぐに溶ける。
3時間の仮眠でだいぶスッキリ。
近くのカフェで朝食をとり、行く先を検討しながら時間を潰す。
せっかく新宿にいるんでね。まずは聖地巡礼ということで新宿のディスクユニオン開店の11時を待ちます。
いい頃合いで移動開始。
11時過ぎた頃に到着したけれど、すでに店内には人人人。3階のジャズ館を目指します。
ジャズ館には1時間半くらい滞在。人多すぎて見にくかった。
外国人の方も多く、ディグりながらビデオ電話して買うかどうか指示を受けてる女の人がいて時代を感じました。
私はレコード4枚、CD1枚を購入してホクホクでした。
青山周辺を見る
昼食をとり荷物を置きに一旦ホテルへ。
14時にチェックイン。
その後青山あたりに繰り出そうとホテルを出ようとすると、思いがけない雨。
折りたたみ傘を取りに戻り、土砂降りの中、メトロで表参道駅に向かいます。

表参道に着くと雨はあがっていた。
Twitter仲間、tomokoさんおすすめのスパイラルマーケットを訪れる。
絵の展示を観たり、空間を眺めたり、買い物をしました。
ひとりでこういうところ来るのは結構久々。なかなか楽しめました。
妻へのお土産はハンカチと靴下。

来た道を戻り、もう一度駅へ。
そこから歩数を数え始める。
というのも、マンガ「Blue Giant」の雪祈が主人公のスピンオフ小説、南波永人「ピアノマン」に表参道駅からブルーノート(マンガや小説の中ではソーブルー)までの道のりの描写があるから。
私も歩測をやってみようと思ったのです。以下引用。
表参道駅を地上に出たところから、歩測を始める。
青山通りを左に折れて、骨董通りに入る。ここまで百七十歩。
骨董通りには高価な服飾店と靴店、飲食店が並んでいるが、もうどの店も閉まっている。
明らかにハイブランドの服を着た二人組とすれ違う。バッグのトレンドカラーが目に刺さる。
自分の服は安物で、今履いている革靴は二万円もしないものだ。
だけど、前には歩ける。
左には岡本太郎記念館がある。それまでの価値観と闘った芸術家だ。批判を浴びながら活動し続けて、確固たる地位を築いたそうだ。この元自宅兼アトリエには、今もたくさんの人が訪れている。
人はそこに苦闘の跡を見るのだろうか。それとも成功者としての結果を見るのだろうか。
顔に当たる空気が冷たい。向かい風だった。
横断歩道を渡り、コンビニの角を左に曲がる。
とても手が届きそうにない品物を並べたセレクトショップを横目に、真っ直ぐ歩く。
ソーブルーだ。
ドアの前に着いた。
合計、八百七十三歩。
冷静に考えても、自分たちが今いる位置は駅から五十歩ぐらいだ。
歩みさえ止めなければ、いつか着くかもしれない。
だけど、十代で辿り着くのは難しい。
十代にこだわりすぎているのかもしれない。今や、トリオだ。他の二人に自分の目標を押し付けることになる。特に玉田には、重すぎる。
南波永人「ピアノマン」より引用
私の歩数は行ったり戻ったりもあったんで1000歩超えるくらいで到着。
本当にハイブランドを着たカッコいい人と何度もすれ違いました。
ブルーノートに到着した時点で17時くらい。
まだ時間があるので、小説の中にもあった岡本太郎記念館を観る。

とんでもないパワーを作品から受け取る。
とにかく言い切りが強い作品群。しかも私に元々備わっている何かが共鳴する。
作品造りはこうあるべき。私も日々の制作を頑張ろう。

このアトリエの棚。ここに収まっている作品の中から展示替えをするらしい。
立体作品も含め約600点がここに保管されている。
アトリエもなんとも生々しい。まだパワーが残ってる感じがしました。
ライヴ前にこんなに圧倒されてしまって良かったのかわからんが、凄いもの観ちゃったな。
ジョエルも観たかな?観てて欲しいな。
Joel Ross’ Good Vibes公演

18時すぎにこの旅2つ目の聖地、Blue Note Tokyoに再度到着。
いよいよ念願の初ジョエルです。そして、ヴィブラフォンを主体とした公演自体も初めて。
ジョエル・ロスは1995年シカゴ生まれのヴィブラフォン奏者。
今年30歳という若さですが、これまで多くの作品に客演し、自作のアルバムも4枚リリース。
現代のブルーノート・レコードの中核をなす重要人物と言っていいんじゃないでしょうか。
そんなジョエルの来日公演は5年ぶり。
コロナの影響もあったのでしょうけど、なかなか観る機会も限られるので、今回は是が非でも行きたかった。

開場までは少しあるけど中に入る。
レジェンドたちの写真を見ながらゆっくりと階段を降り、ロビーへ。
まだソファが空いているので腰を下ろし、広報誌に目を通しながらその時を待ちます。
ロビーに人があふれてきた頃合いで開場。
私の座席はステージに向かって左側、最前列のテーブルで前から3列目。視線の目の前にはヴィブラフォンが鎮座している。目線的にジョエルの真っ正面だ。速攻予約したかいがあったよ。ほんと。

そして開演時間がやってきた。会場は満席。これ、良かった。
直前まで全公演のチケットが残ってたので、思わずTwitterでまだチケットあるよ!とつぶやいちゃったんで。良かった良かった。
4人が後ろから登場。ジョエル、猫の顔の白Tシャツがかわいい。帽子は浅めでベージュのハット。聞いてはいたけど、めちゃくちゃおしゃれでかっこいい。
今回のメンバーはカルテット編成。
Joel Ross(vib)
Jeremy Corren(p)
Kanoa Mendenhall(b)
Jeremy Dutton(ds)
みんなアルバムのレコーディングに参加しライヴも重ねている気心の知れたメンバー。
いよいよ始まる。
最初に驚いたのは、ヴィブラフォンの音の波。響きが独特で肌で風圧を感じるくらい波が押し寄せる。
ジョエルの即興ソロを随所で聴けたけれど、鍵盤を叩いて、「うん、そうそう」とか、「ちょっとちがう」とか反応してるように見えたし、楽器と会話しながら演奏をしている彼を見つめながら、しみじみいいなあと思いました。
ソロが終盤になるとテーマの断片のようなものが表れて、それを合図にほかの3人が合流。
途端に曲にグルーヴが与えられ、スピードも熱量も上がっていく。最高に気持ちいい。
ここ最近の作品は内省的で落ち着いた雰囲気のものだったので、こんなに高速なプレイは観ることができないかもと思っていました。
ジョエル凄いわ。ドレッドを振り回しながらのマレットさばきの様には「千手観音か!」というベタなツッコミを心の中でつぶやくほど。
この音圧、ヴィジュアルを含めた演奏体験はライヴでしか体験できない。このためにライヴ行っているなと再確認しました。
そして、ジョエル以外の3人だけでも十分ピアノトリオとして楽しめる演奏を展開していて素晴らしかった。
特にジェレミー・ダットンのドラムスには驚いた。ジョエルやジェイムズ・フランシーズでの演奏で録音は何度も聴いてるが、生はさらに凄かった。目の前で堪能。
このセットだけじゃなかったみたいですけど、登場から最終曲まで途切れることなく演奏を続け、MCもメンバー紹介が中心。
あっという間に1時間以上が経過していた。こちらも集中していたんだな。
月並みですけど、大満足なステージでした。
あー、終わってしまった。また観たいな。
終演後
帰りたくない。もっと浸っていたいという思いが大きくならないうちに会場を出る。
コム・デ・ギャルソンのあたりで糸井重里とすれ違う。
ジョエルの余韻に浸ってるので、「あ、糸井さんだ」くらいですれ違う。
Twitterの反応を見ているとDMに気づいた。Twitter仲間のひろゆきさんだ。同じセットのジョエルを観ていたはず。見ると飲みのお誘い!嬉しい!誰かと共有したかった。
表参道駅で合流し、ひろゆきさんおすすめの中華に向かう。
ビールで乾杯し、うますぎる中華を食べながら、ジョエルをはじめ、いろんな音楽の話をする。
楽しい。こういうのがSNSやってて良かったと思える瞬間で、本当に楽しい。
ひろゆきさんありがとう。自分語りばかりですみません。またやりましょう。

メトロに乗って上野に戻る。チェックインした時には私だけだったカプセルもほとんど満室でブラインドが下がっている。大浴場で一日の疲れを癒やし、戻ると12時を回っている。明日に備えて眠らねば。
と、思っていたんですよ。風呂場から帰ってくるまでは。。。
聞こえます?これ向かいのカプセルの方のいびき。
動画じゃ伝わんないかな〜?かなりの轟音。
これがあるんですよね〜カプセルホテルって。
なかなか寝付けず。
これならマンガ喫茶の方が良かったんじゃないか?なんてことを思いながら、無理矢理就寝。
高崎の倉賀野へ
朝は8時に起床。身支度をととのえ、9時過ぎにはチェックアウトしました。
この日は、Twitter仲間のアイさんが営む高崎のJAZZ喫茶、蔵人に初訪問すると決めていました。
電車の便がよさそうだから上野に泊まったんですよね。
上野駅近のスタバに入ってVentiサイズのアイスコーヒーを頼み、メールやTwitterのチェックをしたり、蔵人のある倉賀野への経路や駅周辺を検索。
13時開店なので、それまでに昼食をとっておきたいところです。
食べる時間を考慮に入れて上野を発つ。電車はJR高崎線の各駅停車。
2時間弱の旅路。ゆったり車窓を眺めたり、職業柄、駅ごとのサインを確認したり、本を読んだり。
車中まったり楽しめました。
目的地の倉賀野で下車。時間は12時半を回っている。
先にランチを食べる予定だけどすぐ出てくる店なのか。少し不安。急ぎ足で歩く。
蔵人を通り越して、近くのお店、蒼屋(あおいや)でランチ。
混んでる。涙。あかん。時間読み間違えた。
でも他にお店もないし、蕎麦とカツ丼のセットが美味しそうなのでこのまま待つことに。
待ってる間に開店時刻になってしまった。
アイさんのいつもの投稿が入る。
Tina Brooks / True Blueからスタート。。。
事前にこの日に行くことはお伝えしていたのですが、これは私のための選盤じゃないか!ごめんアイさん。なる早で行きたいがまだ料理が出てこない。
13時30分頃に料理が到着。

めっちゃ旨い!蕎麦はツルツル、シコシコ。風味もいい。ソースカツ丼もほどよい大きさでサクサクだった。品の良い味。
味わいつつもかき込む。10分ほどで完食。美味しかった!
蔵人行く時はここが便利なランチ場所。おすすめです。次回はゆっくり食べられるように時間を調整しよう。
高崎のJAZZ喫茶 蔵人(クラート)
さて、いよいよお店に着きました。外観はまさしく蔵。普通じゃない面構えのお店。ワクワクする。

ドアを開けると風除室になってる。漏れ聞こえてくるのはJoel Ross / PRAYERだ!
アイさんのお心遣いが身に染みて涙腺が。。。
中に入ると笑顔で出迎えてくれて、カウンターの端に案内される。
コーヒーとチーズケーキを注文し、顔をスピーカーに正対させる。
すごいすごいとは聞いていたけれど、本当にすごい。
名古屋にも老舗のジャズ喫茶があり、そこも爆音だけど、蔵の奥から押し出される音。この音圧はすごい。この鳴り方は経験したことがない。
おいしいコーヒー(おかわりしてしまった)とチーズケーキを頬張りながら、体を揺らし「いいっすよね〜」とうなる。
Joel Ross / The Parable Of The PoetのA面を聴き終わると、Montaraのリミックスを挟み、Tina Brooks / True BlueのB面!ふたりで「B面が好きなんですよ!」と話す。ティナ・ブルックスのテナーとフレディ・ハバードのトランペットの音がかたまりで押し寄せる感覚。こんな聴こえ方は初めての経験。ライヴともまた一味違った音!すごくいい。最終曲、Nothing Ever Changes My Love For Youの最後、アート・テイラーのタ・タ・タに合わせて二人で膝だったり腰だったりを叩く。
その後もBilly Wooten / Lost Tapes、Barney Wilen/ Barney、McCoy Tyner / Expansions、その流れで河野康弘の「Like McCoy」を教えてもらう。Count Basieのビッグバンドも大迫力だった。
J. R. Monterose、Jimmy Smithなど馴染み深い盤から、Sonny Sharrock、Maurice McIntyreなど持っていない盤も聴かせてもらえた。
この時点で滞在3時間くらい。翌日は仕事なので、名古屋へ帰ることを思うとそろそろ出なくてはいけない時間。
そう思っていたところに、Miles Davis / Aghartaが!
一度は爆音で浴びたいと思っていたので嬉しかった。やっぱり尋常じゃないなこのテンション。ピート・コージーとレジー・ルーカスのギターが棘も粘りも直に聴こえてくるようで凄まじい。いやー聴けて良かった。
最後にアイさんとご挨拶。握手しハグしてお別れ。開店当時、行ったらハグするよ!って言ったのは私だったな。念願が叶った。これからも体を大切に、家族を大切に長く続けてほしい。また行きます。
帰路
帰りは一旦高崎まで出て、新幹線で東京へ。東京駅で駅弁買って名古屋へも新幹線で帰ってきました。
帰宅したのは22時頃。
「お前長いことおらんかったなぁ〜」という顔で出迎えを受ける。

ジョエル・ロスの生音と蔵人のレコードの音。ジャズはライヴとかジャズはレコードとか言いますけど、どちらも最高の環境で聴いてみて思うことは、両方素晴らしい。音楽って最高だ。
久々のひとり旅。本当に楽しめた遠征でした。また行きたい。すぐにでも。マーキス・ヒルも行きたいぞ。
思いのほか長文になってしまいました。ここまでのお付き合いありがとうございます!
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