カマシの作曲能力が冴え渡るEP
2015年「The Epic」で熱狂的な支持を集めたカマシ・ワシントン。
3枚組の大作でしたが、ぶっ通しで聴いて、何度もリピートして聴き込んだことを覚えています。
カマシは、自分の世界に入り込んで憑依したように吹きまくるサックスプレイヤーではなく、
ソロパートは熱く演奏しつつも、しっかり全体を俯瞰して演奏できるクレバーなプレイヤーだと思います。
そして、もう一つの魅力が作曲の能力。
このアルバムは、クラシック音楽の技法である対位法が使われています。
対位法は独立した複数のメロディを、調和して重ね合わせる技法で、
6曲が収録されていますが、5曲目までのフレーズを全て使って6曲目ができているんです。
これには度肝を抜かれました。
「あのフレーズがここにこう来るのね〜」と全く別々だった曲が1曲に集約されていることに
すごく感動しました。
違ったものが集まって「一つ」を形成している。
まるでわれわれの地球を表現したかのようなアルバム。
こんな作り方のジャズのアルバムはなかなかないと思います。
アルバム全体を通して、脇を固めるいつものメンバーは素晴らしいです。
ロナルド・ブルーナーJrとトニー・オースティンのダブル・ドラムは必然性があるし、やっぱり楽しい。
ベースのマイルス・モーズリーやトロンボーンのライアン・ポーターも安定感がある。
そして、特筆すべきはトランペットのドンティー・ウィンスロー。
2曲目の「Humility」でのソロは鳥肌モノのかっこよさです。
ライブで演奏される「Truth」の進化
6曲目の「Truth」は、ストリングス、ギター、ビブラフォン、そして厚いコーラスが入り、
重厚かつ緻密なサウンドが展開されます。
これはライブでどうなるんだ?再現はできそうにないなと感じていました。
それに、このミニアルバムでツアーはやらないだろうし、
そもそも観る機会もないのかもしれないと思っていたのですが、
2018年、2019年と「Heaven And Earth」の来日公演で「Truth」やってくれました。
2018年の公演の時には、アルバムで感じた重厚さはなく、スカスカした印象でしたが、
そこは各プレイヤーの腕でカバーしてまとめ上げていましたね。
2019年の時は、原曲とは異なるスピードや、進行で、
ライブならではのドライブ感のある曲に変わっていて、「Truth」は進化していました。
演奏を重ね続けてより良い方向にシフトしていったんだなと感慨深い思いです。
そろそろ何かやってくれそうな時期ですが、
またこういうコンセプチュアルなEPを作って欲しいですね。
これからのカマシ・ワシントンからも目が離せません。
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