疲弊と枯渇に立ち向かう
そのミュージシャンやバンドの曲のなかで、一番好きな曲を選曲し紹介していく「この1曲」。
本日はザ・バンドを取り上げます。
ザ・バンドはカナダ人4人とアメリカ人1人で結成されたロック・バンド。
メンバーと担当楽器は以下の通り。
- リヴォン・ヘルム(ドラムス、マンドリン、ヴォーカル)
- ロビー・ロバートソン(ギター)
- リック・ダンコ(ベース、ギター、ヴォーカル)
- リチャード・マニュエル(キーボード、ヴォーカル)
- ガース・ハドソン(キーボード、サックス)
まず結成の経緯が面白いんですけど、
1959年当時、アメリカのロックンローラーだったロニー・ホーキンスが、
ロックンロールが下火になっていたアメリカを離れ、
彼の専属バンドであるザ・ホークスを引き連れ、カナダで活動したことがきっかけ。
こんな出稼ぎ、今じゃ考えられない。
おまけにリヴォン・ヘルム以外のメンバーがホームシックでアメリカに帰ったため(笑)、
埋め合わせのメンバーをカナダで調達し、
ロビー・ロバートソン、リック・ダンコ、リチャード・マニュエル、ガース・ハドソンの4人が加入します。
ロニーと別れてからのザ・ホークスはカナダとアメリカでライブ活動をつづけ、
ちょうどエレクトリック化するボブ・ディランのバックバンドに大抜擢されます。
1968年にはザ・バンドと改名し、ファースト・アルバム「Music From Big Pink」を発表。
トップバンドの仲間入りを果たします。
その後も傑作を発表しながらライブ活動を活発に行っていましたが、
メンバーはどんどん疲弊していき、結局1976年のラスト・ワルツを最後に、
オリジナルメンバーでの活動を終了することになります。
もう、当時のハードさは年表見るだけでも伝わってきます。
毎年のようにアルバムを出して、ツアーを回る。休息はなかったでしょう。
疲弊と枯渇に立ち向かい続けた日々だったのではないでしょうか。
それでアルコールや薬物にハマる。
ザ・バンドだけではないですが、このサイクルでやっていればおかしくなって当然でしょうね。
結局、オリジナルメンバーでの再結成を果たすことなく多くのメンバーが亡くなってしまい
残念ですが、
バンド継続派だったリヴォン・ヘルムと、解散を進めたロビー・ロバートソンが、
リヴォン・ヘルムの最晩年に和解していたという話を聞いて心底良かったと思ったことを覚えています。
ザ・バンドで一番好きな曲
ザ・バンドの魅力といえば、
アメリカのルーツミュージックに根差した独特なソング・ライティング、
ライブで鍛え上げられた個々の演奏力、
そして、ヴォーカルのバリエーション。主に3人がヴォーカルをとっていますが、
いろんな曲調に最適な人材が充てられていますし、コーラスを含めた、声の相性がとっても良いと思っています。
ユニゾンでもハモりでも相性抜群です。この5人。
その中でも高く伸びのあるリック・ダンコのヴォーカルが大好きで、
一番好きな曲も、リック・ダンコがヴォーカルの曲。
1970年発表のサード・アルバム「Stage Fright」のタイトル曲、「Stage Fright」を選曲します。
特に、ラスト・ワルツでのリック・ダンコのヴォーカル、ガース・ハドソンのエレピが最高です。
昨年、映画「ラスト・ワルツ」のリバイバル上映を観ましたが、
素晴らしい演奏にグッとくると共に、間に挟まれるバンドのインタビューなどには、
「もう無理」感があふれていて何度観ても切なくなります。
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